なぜ「測る」のか

「冷えない」という症状の裏には、空気側(フィルターや熱交換器の汚れ、室外機まわりの通風不良)、冷媒側(漏洩による不足、圧縮機や膨張弁の不良、詰まり)、電気制御側(基板・センサー・リレー)の、まったく違う原因が隠れています。見た目や音だけで判断して部品を替えると、直らないうえに費用だけがかかります。測定器を接続して数値を読むのは、原因を絞り込んで無駄な作業を減らすためです。

1. 吸込みと吹出しの温度差

室内機の吸込み口と吹出し口の空気温度を測り、その差を見ます。冷房で正常に働いていれば、おおむね 8〜12℃ 程度の差がつくのが一般的な目安です。差が小さければ「冷やす力が足りない」、差は十分なのに部屋が冷えなければ「風量不足や部屋側の熱負荷」が疑われます。最初に全体の状態をつかむための数値です。

2. 高圧と低圧(冷媒の圧力)

室外機のサービスバルブにマニホールドゲージ(圧力計)を接続し、高圧側と低圧側の圧力を測ります。圧力は外気温度や運転状態で大きく変わるため、絶対値ではなく「その条件での適正範囲に入っているか」「高圧と低圧のバランスはどうか」を見ます。

圧力の傾向疑われること
低圧が低く、高圧も低い冷媒不足(漏洩)、低圧側の詰まり、膨張弁の開度不足
高圧が高い室外機の熱交換器の汚れ・通風不良、室外ファンの不良、冷媒の過充填、空気混入
低圧が高く、高圧が低い圧縮機の圧縮不良(弁の損傷など)、四方弁の内部漏れ
両方とも適正範囲冷媒系統以外(風量・センサー・制御・部屋側の熱負荷)を疑う

3. 過熱度(スーパーヒート)

低圧側の圧力から求めた冷媒の蒸発温度と、吸入管の実測温度との差が過熱度です。冷媒が蒸発器(室内熱交換器)でどれだけ余裕を持って気化しているかを示し、冷房運転では数℃〜10℃ 前後が一般的な目安です。過熱度が大きすぎれば冷媒が足りていない(不足・膨張弁の絞りすぎ)、小さすぎれば冷媒が液のまま圧縮機に戻る「液バック」のおそれがあります。

4. 過冷却度(サブクール)

高圧側の圧力から求めた凝縮温度と、液管の実測温度との差が過冷却度です。凝縮器(室外熱交換器)で冷媒がどれだけ確実に液化しているかを示し、こちらも数℃〜10℃ 前後が目安です。過冷却度が小さく過熱度が大きい組み合わせは冷媒不足の典型で、過冷却度が大きく高圧も高い場合は過充填や凝縮不良を疑います。

5. 運転電流

クランプメーターで圧縮機とファンモーターの運転電流を測り、銘板の定格値と比べます。定格より大きければ過負荷(高圧上昇・圧縮機の機械的な不良・電源電圧の異常)、極端に小さければ圧縮機が仕事をしていない(圧縮不良・インバーターの出力低下)ことが考えられます。三相機では相ごとの電流の不平衡も見ます。

数値の組み合わせで原因を絞る

1 つの数値だけで断定せず、組み合わせで読みます。たとえば「低圧が低い・過熱度が大きい・過冷却度が小さい・電流が小さい」がそろえば、冷媒不足の可能性が高く、次は漏洩箇所の特定に進みます。「高圧が高い・過冷却度が大きい・電流が大きい」なら、まず室外機の熱交換器の汚れと通風を確認します。数値がすべて適正なのに冷えないときは、センサーの読み値と制御の動き(膨張弁の開度、ファンの回転数、エラー履歴)を見ていきます。

ここに挙げた数値は一般的な目安です。冷媒の種類(R410A・R32・R22 など)、外気温度、室内の負荷、機種の設計によって適正範囲は変わります。実際の判断は、メーカーの技術資料と対象機器の条件に照らして行います。

お客様側でできること

  • フィルターの汚れと、吸込み口・吹出し口のふさがりを確認する
  • 室外機のまわりに物が置かれていないか、熱交換器(フィン)が汚れていないかを見る
  • いつから、どの部屋が、どの時間帯に冷えないかをメモする
  • リモコンにエラーコードが出ていれば、表示どおりに写真で残す
  • 電源の入れ直しは 1 回まで。繰り返すと圧縮機を傷めることがある